44歳・大学准教授が「婚活」にハマってわかった、婚活市場の「見えない歪み」

第二の特徴が出会いの多頻度化です。婚活市場では、短ければ数十秒、長くても一時間程度の時間で、当事者が望む限り無制限に異性と出会うことが可能です。

例えばマッチングアプリの場合ですと、年齢、職業、年収など相手に望むスペックで検索をかければ、一瞬でデータベースから条件に当てはまる候補者の一覧が抽出可能です。婚活パーティーでも結婚相談所でも、本人が望み、会費を払い続ける限り、何度でも出会いの機会を獲得できます。

この婚活市場が持つスペックの可視化と出会いの多頻度化という特徴のもとで、人々は「自分の求める理想の配偶者」を求めて、多くの異性を比較して「選ぶ」、婚活のプレイヤーとなり、独特の力学を生み出していくことになります。

婚活市場で働く「独特の力学」

婚活総合支援サービス企業が提供する、スペックが可視化され、多頻度化した出会いをもたらす婚活市場での出会いは、日常生活での男女のものとは全く異なります。

日常生活における男女の出会いは、学校や職場、趣味の集まりといった、比較的固定化され、長期的に安定したクローズドな空間の中での人間関係をベースに生じるものです。それに対して婚活市場は、参加費を支払えば誰でも自由に参加、退出が可能です。そこは、友人や親子、職場の仲間といった人間関係が存在せず、企業が純粋に出会いだけ提供する形で設計されたオープンな空間です。

この婚活市場という空間で、異性のスペックが可視化され、提供されるサービスを利用して出会いを繰り返していくことが可能な状態になると、私達はどうなってしまうのか?

まず、可視化されたスペックのもとで、男女それぞれが他者の価値を推し量り、比較考量することが可能になります。例えば、年収800万円以上の男性しか参加できない婚活パーティーを想定してみましょう。このような場では男性の収入面のスペックが揃えられているため、年収1億円だとか飛び抜けた収入がない限り、男性の「年収」は比較優位にはなりません。

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