「若者の恋愛離れ」というインチキ話を政府・マスコミが蒸し返し続けるワケ
1980年代後半から「恋愛できない症候群」というネーミング
1987年の厚生省人口問題研究所の「独身調査」によれば、20〜24歳の男性で交際している恋人・婚約者がいると回答したのは26.8%しかない。25〜29歳の男性でも25.6%だ。つまり、20代独身男性の7割が配偶者や恋人がいないという今回の内閣府データとあまり変わらない結果だ。
この恋人・婚約者のいない男性たちの中には当然、デート経験のない人もかなり含まれている。当時の調査では「デート経験」については明らかにされていないが、3〜4割くらいはいたのではないかと推察できる。
それがうかがえるのが、「性体験の有無」だ。当時の調査では、20〜24歳の男性では43%、25〜29歳では30%が「性体験がない」と回答している。もちろん、「性体験がなくてもデートまでは経験がある」という男性もそれなりにいるはずだが、「性体験がない」という男性の中には、そもそも女性と二人っきりになったことがないという人もかなりいるはずなので、「デート経験なし」も近い割合になるのではないかと思う。
3割くらいは恋愛に積極的でガツガツしているが、7割くらいは恋人や配偶者がいない。さらに3〜4割くらいはデートすらしたことがない人も存在している――つまり、2022年も1987年も、若い男性の恋愛の傾向それほど大きな違いはないということだろう。
それはマスコミの報道を見てもわかる。
実は日本では30年以上前から、さまざまな調査によって、女性との交際に積極的ではない男性たちの存在が浮かび上がり、「シングル」という言葉も普及して、今とほぼ変わらない論調が出来上がっている。
例えば、1988年の「読売新聞」では、「独身男が増えている」という連載がスタート。その第1回である『「価値ある」と進んで選択 “30代未婚”10年で倍 女性含めネットワーク』には、今の「若者の恋愛離れ」を紹介した記事の中にあっても違和感のない記述が並ぶ。
<一人で生きる男性が増えてきた。「配偶者に恵まれない」という人もいるが、「自分の世界を大切にしたいから」という人もまた、少なくない>(読売新聞1988年5月31日)
さらに翌年になると、「朝日新聞」が恋愛に後ろ向きな人々に、こんなキャッチーなネーミングをする。
<恋愛したけれど相手がいない、異性とどうやって付き合えばいいわからないという「恋愛できない症候群」の若者が、都会を中心に増えている>(朝日新聞1989年7月13日)
いかがだろう。この時代から「若者の恋愛離れ」という話は何も変わっておらず、それを紹介するマスコミの論調も変わっていない。厳しい言い方をすれば、なんの進歩もしていないのだ。
人はどうしても「自分が生きている今の時代は特別」と思い込みたい生き物だ。「今はスマホや多様性など、いろんな社会の変化が起きている。だから、人の行動も劇的に変わっているに違いない…」そんな先入観に縛られているので、マスコミの「若者の恋愛離れが進行しています」なんて話にコロッとだまされてしまう。
たかが35年ぽっちで、人々の意識はそれほど劇的に変わらないのだ。
