選ぶのではなく“めぐり合う”、おせっかいに身を任せる15年目の婚活事情

アプリに疲れ、相談所で満たされない……

 この婚活イベントは魚津市が主催し、運営を松浦さんの「コミュニティ婚活」が担った。女性はコミュニティ婚活の登録会員で、今は首都圏や関西圏に住む人たちだ。

 富山は初めて訪れるという人もいれば、富山出身という人もいた。一方、男性は地元の人たちで、魚津市が声をかけて募った。

 コミュニティ婚活とはどんな団体なのか。

 一言でいうなら、「結婚に向けた出会いを目的にした審査制の独身サークル」だ。今回のように地方自治体とタッグを組んで婚活イベントのプランニングをしているほか、現在約150人の会員同士による交流機会も提供している。

 ただサークルという枠組みを作って終わりではない。マッチングアプリに疲れ、既存の結婚相談所では満たされない、そんな思いを抱えた人たちが集まってきている。

 そこには理由がある。その一つが、「おせっかい」付きということだ。

 一般的な街コンのように、スタートしたらあとは2時間、よしなにどうぞ、ということはない。ご対面の直後、松浦さんが「さあ、近づいて」と両者を寄せる。参加者が行動するための「言い訳」を作る。参加者に求められる積極性をオブラートに包んでしまう。潤滑剤があるから、コミュニケーションが進み始める。

 おせっかいはイベント中だけに限らない。

 会員の女性たち向けにはこのイベント参加前からチャットアプリでのグループを作り、交流する機会を設けていた。男性陣と合流前、女性たちだけのランチタイムでは、リアルでは初対面ながら、ゆるい雰囲気で談笑する様子もあった。

 イベントのさなかには、参加男女全員が入るグループも松浦さん主導で作られる。そのため終わったあとも、参加者同士が交流する機会が継続して確保される。

「うちはイベント屋さんではない」

 松浦さんはそう強調する。参加者の積極性と自主性に任される単発型、その場限りのイベントとの違いはここにある。

 コミュニティ婚活の特徴はもう一つ、「会わなかったはずの人にめぐり会う」ということだ。

 松浦さんは言う。

「マッチングアプリや結婚相談所はスペック、外見重視です。まずハードルがあり、それを越えないと会わない。それも、自分が30年、40年生きてきた中での限られた判断基準です。ここでは、そうしたハードルがあっては会わなかったであろう人たちにもめぐり会います」

 職業や年収といったスペックから入ると、その後のコミュニケーションはどうしても「減点方式」になりがちだ。そうではなく、多くの人たちが学校やサークルで交友関係を広げてきたように、まずはめぐり合わせで会ってみる。会話してみる。スペック抜きで、純粋に人間性に触れてみる。

 松浦さんはこれを「自然で無理のない出会いの場」と表現し、重視する。

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