35歳・大学教授が「マッチングアプリ」を使ってわかった、婚活市場の「残酷な現実」
そのような状況もあって、立場と年収だけを携えて挑んだ人間である私と、継続的に会ってくれる彼女には感謝しかなかった。
「うーん、もうその人で決めていいんじゃないか? もう週1、2回ペースで会って飯食ってるんだろ。手を出すどころか、交際にすら至ってないことに、むしろビックリだよ」
久しぶりに近況報告を聞きたいという真田は、感慨深げにそう言った。どうやら、Tさんと交際に至っていないことが、彼にとっては不思議に感じるらしい。
「あと、アプリを利用していることを後ろめたいと感じているということは、お前は少なからず彼女に好意を抱いているってことだよ。さっさと告白して、交際を申込めよ」
「そうかな」
「お前まさか、振られたらどうしようとか、中学生みたいな青臭いこと考えているんじゃないだろうな?」
「いや、なんて伝えればいいかな……って」
真田は笑った。
私はこれまで、受験勉強と研究に勤しみ、仕事として教育に携わってきた。それに関わること以外の全てを、時間を奪う雑事として切り捨ててきたのだ。
自分自身を薄っぺらいというのはそのままの意味で、私の武器は学歴しかない。ここまで、自分が学んできた理論で誤魔化してきたが、私は婚活市場で戦う資源が圧倒的に足りないのだ。
家族社会学には「恋愛資本」という言葉があるらしい。
既婚者と未婚者の過去の交際歴の調査では、既婚者の過去の交際経験人数は3~5人であり、未婚者はその数字を下回るそうだ。
交際経験人数が多いということは、異性と出会い、交流する機会そのものが多いということである。