りぼん発の漫画「初×婚」、結婚目指す高校生に学ぶ恋愛のル―ル

「世界一の結婚」を目指す高校に入学し、マッチングシステムで選ばれたパートナーと共に寮生活を送る――。胸がキュンとする恋愛物語を世に送り続けている少女漫画雑誌「りぼん」(集英社)で連載中の「うい×こん」は、高校生が婚活をする斬新な設定で話題を呼んでいます。赤の他人の2人が少しずつお互いを知り、恋に落ちていく姿は、大人世代でも胸がときめくこと間違いなし。作者の黒崎みのりさんに、ストーリーの誕生秘話などを聞きました。

世界一の結婚を目指して高校生活を送る初(左)と紺©黒崎みのり/集英社

物語の舞台は、超有名IT企業「セブンオーシャン」の経営者夫妻が創立した「七海学園高校」。会社が開発したマッチングシステムで選ばれたペアが、同じ部屋で暮らして高校生活を送りながら、「金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)」を目指します。見事ゴールデンカップルに選ばれると、卒業と同時に結婚し、セブンオーシャンの社長になれるという「一攫千金婚いっかくせんきんこん校」に、主人公のういは「運命の人と家族になる」ことを夢見て入学します。ところが、パートナーとなった成績優秀、スポーツ万能なこんの目当てはお金で……。

高校生がマッチングシステムで出会って同居⁉

コミックはこれまでに11巻が刊行され、累計167万部(電子版を含む)を突破。1月に発表された「第68回(2022年度)小学館漫画賞」(児童向け部門)も受賞するなど、今勢いのある漫画として注目を集めています。一方で、小中学生が主要読者のりぼんで、結婚を目指すテーマ設定、しかも出会いはマッチングシステムという物語は、かなりの「冒険」だったはずです。それについて、黒崎さんは「実は、少女漫画では『結婚もの』は人気のテーマ。それに、現代の婚活事情をみれば、マッチングアプリの普及で、AIを活用して相手を見つけることが自然に受け入れられる時代になっていると感じていました。『運命』を題材にしたときに、マッチングシステムはあり、と思ったんです」と話します。

婚活をした黒崎さん自身の経験も生かされています。合コンに行ったり、友達の紹介で付き合ったり、恋愛のための「恋活」をしていたときは、うまくいかなかったという黒崎さん。「私、元々漫画やアニメが好きだったので、同じ趣味の人が集まる婚活パーティーに行ってみました」といい、パートナーにもそこで出会ったそうです。対象を絞って探した方が「運命の人」に出会う確率が高い――。そんな実感もストーリー設定に生かされました。

運命は自分の力で切り開く

ちなみに、最初に設定した登場人物は「初」。中1のときに事故で両親を亡くし、家族を作ることを切望して七海学園に入学した真面目な性格の女の子です。「初のパートナー、紺はその真逆の性格で描きました。これは少女漫画の王道ですね」と黒崎さん。読者からは人気抜群の紺ですが、黒崎さんにとっては「最も描きにくいヒーロー」なのだそう。「私は考えていることを素直にそのまま話してくれる人が好き。紺は頭の中で計算し尽くしているので、ちょっとねぇ……」と苦笑いします。

実は、「初×婚」には隠れテーマが二つあるそうです。一つ目は「家族」。黒崎さんは、2018年の長女出産後に重い病気が判明し、「私がいなくなった後の娘の人生を考えてしまった」と言います。「知らず知らずのうちに、私(親)がいなくなっても、自分の力で自分の居場所を見つけることができるよ、というメッセージを込めていました」。

その思いを象徴する場面が1巻に出てきます。「世界で一番好きなのはパパ」「パパもママかな」と話す両親に幼い初が「自分を一番にしてほしい」と言うと、両親が「いつかあなたもパパやママより大事に思う『世界一好きな人』に巡りあう」と話す場面です。

初の両親が初に語りかける場面(「初×婚」1巻より、©黒崎みのり/集英社)

一方で、登場人物の中には、母親から愛されずに育った少女なども描かれています。「読者から、『両親から愛されていた初がうらやましい』というメッセージが来て、ハッとさせられました。様々な環境で育った子が登場しますが、いずれも、自分の力で運命を切り開いていく強さを感じてもらえたら。今はつらくても自分を信じて進んでいけば、いつか明るい場所に出られるよ、という思いです」と話します。

対話をし続けることと思いやり

もう一つのテーマは「恋愛」。物語が進むにつれて、初と紺は、お互いを理解し、少しずつ心を通わせていきます。黒崎さんは「初は、めげずに紺と対話する姿勢を持ち続けます。何かあれば、その場で気持ちを隠さずに話し合おうとする。そんな初に影響されて、紺も変わろうと努力します」と説明します。

現在、りぼんでは、初と紺が3年生になりました。「ゴールデンカップル」の栄誉を勝ち取るためのバトルも激しくなることが予想されます。「結局は、相手と向き合い、思いを伝え、そして相手の立場を思うことが何より大切。そんな思いを持って登場人物と向き合っています」と黒崎さん。初と紺の歩みには、どんな世代でも、そして恋愛中でも結婚生活でも効く「学び」がたくさんあるのではないでしょうか。(メディア局編集部 野倉早奈恵)

引用元:https://otekomachi.yomiuri.co.jp/lifestyle/20230308-OKT8T363743/

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