結婚を決める瞬間は? 婚活をこじらせる「ピンときた・こない」にある男女の“傲慢さと善良さ”

 現在、タクオさん夫妻には3人の子どもがいる。ちなみに、学生時代から交際していた彼女だが、その後、タクオさんと並行して4人の男性と交際していたことがわかった。友人たちには周知の事実だったが、いずれ結婚する相手だからとタクオさんには伏せてくれていたらしい。

「妻と交際中、僕の母に会わせたら、母は『もしウチが倒産するようなことがあっても、逃げずに支えてくれる人だね』と言ってました。前の彼女のことも知っているけど、あの子は逃げそう、と。親って案外ちゃんと見ているものだなと思いましたね」

 結婚はふたりで決めるべきものだが、周囲がその相手をどう評しているかが、後押しとなることがある。作中の架は、真実をいい子だと感じている。友人たちに会わせてもその“評価”は変わらない。そんなにいい子ならすぐに結婚すればいい。しかし、そうはしなかった。架は真実の行方を探しながら、自分はなぜすぐに真実との結婚を進めなかったのかも考えていくことになる。

 リョウタさんに話を戻そう。急に決まった海外赴任。交際半年の彼女とはこれを機に別れるという選択肢もあった。

「僕は彼女に、決定権を託しました。ちょっとズルかったかな。赴任先についていくか、いかないか。前者を選べば結婚することになるし、後者なら今後は別々の人生を生きることになる。彼女は海外どころか鳥取からもほとんど出た経験がない。英語も話せない。さすがに迷うだろうと思ったのですが……意外とあっさり『いいよ、ついて行く』と言ってくれたんですよ」

 それはそれでうれしかった、とリョウタさんは振り返る。早々に婚姻届を出し、渡航の準備に追われた。

「ピンとくるものがあって結婚したわけじゃないけれど、そんな瞬間って本当に人生のなかであるんですかね。僕たちは今年で結婚7年。ふたりで仲よく暮らしています。僕は結構願望がないというより、結婚への期待値が低かったんだ、と振り返って気づきました。両親の関係が冷めきっていた影響もあるかな。だから、結婚相手にも何も期待しなかった。いまも妻が健康に生きて、ちゃんとご飯を食べて、生きていてくれればいいと思っています」

 3年の海外赴任を終え、現在は大阪で暮らしている。

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