“異次元の婚活”で注目!「移住婚」成功者が明かす“マッチング住まい&仕事”の探し方

移住婚は積極性が大事(C)日刊ゲンダイ

 岸田政権は、児童手当の拡充をはじめとする異次元の少子化対策について試案を発表した。その効果はともかく、“異次元の婚活”として注目されているのが移住婚だ。どんな人が移住とセットでパートナーを見つけているのか。ポイントを探った。

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 移住を希望する人の割合が、じわじわと増えている。内閣府は、コロナ禍が拡大した2020年から生活意識や行動の変化についての調査をスタート。「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」としてまとめている。

 その最新版が昨年7月に公開された第5回で、東京23区に住む人は全年代の37%、20代に限ると51%が地方移住に関心を持つ。第1回との比較では、20代で16ポイントも増えている。都心に住む若い人ほど、移住への関心が高いことが見て取れるだろう。

 コロナ禍では、事務系を中心にテレワークが定着。出社しなくていいなら都心ではなく、環境のいいところに住みたい。働き方改革に積極的な企業に勤める人の間では、そんな意識から地方に移住する人も増加した。若い人の移住熱の高さは、そんなことも影響しているのかもしれない。

■希望者と自治体を無料でつなぐサービスも

 では、移住と婚活をセットにするメリットは何か。明治学院大社会学部の鬼頭美江准教授がこう言う。

「地方は、都市に比べると同質性が強く、そこに暮らす人たちは価値観が共通しやすいのが特徴です。移住する人も興味のある町を選ぶわけですから、町の人と類似点が重なりやすい。人は自分と似ている相手を好む傾向があるので、婚活の選択肢のひとつに移住型婚活を加えるのは、よいと思います」

 地方自治体の中にも、少子高齢化の打開策として移住婚に注目するところがある。日本婚活支援協会は、そんな自治体と移住婚を希望する独身者をマッチングするサービスを行っている。

 現在受け入れている自治体は、京都府全体のほか、北海道美幌町や福島県会津若松市、富山県氷見市、長野県駒ケ根市、同山ノ内町、同朝日村、同宮田村で、20歳から50歳くらいまでの移住希望者は同協会のHPに無料で登録できる。登録後の追加負担はなく、面談はオンラインで行う。直接の面談を希望する場合の交通費は自己負担だという。

 同協会と連携した自治体が移住先の希望エリアの人にとっては、使い勝手がいいサービスだ。移住希望エリアがない人は、やっぱりマッチングアプリが便利だろう。

■狙い目は近畿から中部に住む人

 マッチングアプリを運営するOmiaiは昨年1月1日から9月15日までの間、会員データを分析。アプリの利用者率が高い都道府県をランキング化した。それによると、トップ3は東京、大阪、京都の順で、大都市を抱える都道府県が上位に入っているが、より詳しくみると、移住婚を希望する人の出会いの確率が高まるという。

「トップ10のうち近畿地方の2府2県がランクインしたほか、中部地方の愛知と岐阜もアプリの利用者率が高い傾向が明らかになりました。マッチングアプリを利用して地方移住型の婚活や恋活をする方は、近畿から中部地方に住む方を探すと、出会いの確率が高まる可能性があります」(広報担当者)

 うまくマッチングに成功すれば、その相手に町のことを教えてもらうことが会話のキッカケになる。その熱意が相手に伝われば、2人の距離が縮まるかもしれない。

 ちなみに、NPOふるさと回帰支援センターは毎年、相談者やセミナー参加者を対象に地方移住に関するアンケート調査を行っている。昨年の年代別移住希望地ランキング(窓口相談者)では、すべての年代で静岡がトップ(表参照)。東京や名古屋、大阪などからのアクセスのよさが人気の秘密のようだ。

まず仲良くなったのは妻のお義母さん

マッチングアプリが便利

 それでは、移住と婚活の両方に成功した人はどうやって幸運にめぐり合えたのか。新潟生まれの勝部陽介さん(40)はかつて島根県を訪れたことをキッカケに奥出雲町が気に入って、5年前に移住した。勝部さんに聞いた。

「よそから来た人が仕事や住まいを探すと、苦労すると思ったので、ふるさと島根定住財団を利用して情報を入手しました。仕事は新潟で酒造りをしていた関係で、酒造会社を紹介してもらい、面接にも財団の方が同席してくださり、とても助かりました。住居探しも財団のサポートのおかげでとてもスムーズ。新潟からの引っ越し費用も30万円ほどかかるのですが、助成金があり、実際は10万円ほど。何から何まで大助かりでした」

 どんなに移住熱が高くても、仕事と住まいがなければ厳しい。それがうまく見つけることができたのは、移住婚活の第一段階突破だ。勝部さんのように仕事や住居の確保には、自治体のサポートが欠かせない。前述の協会に登録がない自治体でも、問い合わせてみるといいだろう。

 では、肝心のパートナーは?

「定住財団の担当者と奥出雲町定住産業課の方が連携してくださり、町が運営する結婚・子育てコンシェルジュに登録しました。将来の妻となる女性との出会いはそこです。コンシェルジュの方と妻のお義母さんが同じ職場で働いていて、妻を紹介してもらいました」

 まず仲良くなったのは妻ではなく、義母だったそうだ。

「コンシェルジュの方に『彼女の家は、お婿さんを欲しがっている』ということを聞いていて、町役場の方々と仲良くさせてもらう過程で、まずお義母さんと仲良くなったのです。彼女を必ず週1回はデートに誘っていました。交際中も時々、彼女の実家で食事をごちそうになり、お父さんとお酒を飲んだりしていたので、彼女やご両親に熱意が伝わったのだと思います。2年ほど交際し、昨年3月の妻の誕生日にプロポーズして、翌4月の私の誕生日に入籍。10月に出雲大社で結婚式を挙げました」

自分から積極的に出会いのチャンスを

「行政に相談したので移住はスムーズでした」(勝部さん)(C)日刊ゲンダイ

 新潟では3回ほど婚活イベントに参加。女性が求める年収などの条件が高過ぎて、空振り続きだったという。なぜ奥出雲では“逆転ホームラン”に結びついたのか。

「奥出雲で婚活年齢の人は、ほとんどが職場と自宅の往復で、仕事さえあれば生活に困ることはないものの、出会いのチャンスが少ない。そのため男女とも婚活への積極性が下がってしまいます。ですから、マッチングアプリや自治体のサポートなど出会いの手段をうまく使って、自分から積極的にチャンスを生み出すことがとても大切だと思います」

 勝部さんは幸運にめぐまれたが、夢破れて移住先から戻ってくる人もいる。性人類学者のキム・ミョンガン氏が言う。

「移住婚が成功するか失敗するかは、その人が地元の人間関係やコミュニティーに溶け込めるかどうかに尽きます。できる人はオープンに自分をさらけ出して、町内会の祭りや行事などにフレンドリーに参加できる人ですよ。都市部のマンション暮らしだと、何をしているか分からない人でも周りに警戒心をあまり持たれませんが、地方では警戒心を持たれたら絶対にアウト。移住も婚活もできません。簡単にいえば初めて入った居酒屋で自然にスタッフや常連さんと会話でき、友達になれるような人です。そうやって積極的に町や人にかかわらないと、仕事も住まいも見つかりませんよね」

 勝部さんは違うが、人間関係の距離を詰められずに失敗した人の話を聞いたことがあるそうだ。しかし、うまくいくと、「自分の畑で収穫したものを近所に配ると、いろいろな野菜をもらえたりして、それらの野菜が1週間食卓に並ぶことがあります」と笑う。

 さあ、移住婚にチャレンジしてみますか?

引用元:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321048

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