“官製婚活”、コロナ禍が落ち着き再燃 「押しつけでは?」疑問の声も

マッチング、赤い糸、結婚応援…。九州各県が作成した婚活パンフレット

 新型コロナ禍が落ち着き、自治体による「官製婚活」が再燃している。関連予算を倍増させてイベント数を増やし、マッチングに人工知能(AI)を導入するところもある。「異次元の少子化対策」をうたう国は本年度13億円の交付金を支給し、さらに拡充する方針。ただ実効性を評価しづらい上、「結婚し子を持つことが素晴らしいという価値観の押し付け」につながるとして廃止した例もある。

 満開の桜の下、男女のペア6組が散策していた。3月下旬、福岡市中央区の市植物園であった福岡県による交流イベント。参加した女性(30)は「行政の主催だから安心。男性とも自然な会話ができた」と話す。

 県は2005年から婚活事業に取り組んできた。年間3千万~4千万円を投じて300回を超える交流会を開く。629組の成婚が確認されたという。

 感染禍の落ち着きを見越し、本年度の関連予算は過去最大規模の6530万円を計上した。イベントの数を増やすほか、秋には登録する男女の相性を診断するAIシステムを導入する。

 長崎県は本年度予算に前年度から1千万円増の8450万円を積み、若者に事業を周知するための新たなウェブ広告を打ち出す。担当者は「人の動きが活性化する今、出会いの場をつくり人口減少を食い止めたい」と意気込む。

 熱心な取り組みの背景には、国の財源支援の拡充がある。「要望や問い合わせが多く、交付額は増加傾向」(こども家庭庁)。婚活事業に使える地域少子化対策重点推進交付金は本年度、最大助成率を3分の2から4分の3に引き上げた。

 一方で「費用対効果が見合わない」と手を引いた自治体もある。千葉県香取市は、事業を中止した19年7月末までの8年間で35組が成婚した。1組に140万円かかった計算になるという。予算の無駄を洗い出す市の事業仕分けで「他の少子化対策の方が実効性が高い」との意見が多数を占め、事業の凍結が決まった。

 広島県安芸高田市は、取り組んだ12年間で59組の成婚がありつつも、21年3月末で事業を終えた。20年8月に就任した石丸伸二市長(40)は「行政が『結婚して出産を』という価値観を押し付けることになり、性的少数者や子どもを持てない人への配慮に欠けていた。多様性を尊重する時代に逆行している」と話す。

 大正大の江藤俊昭教授(地方自治論)は「市民が実効性などを踏まえ、何が少子化対策に効果があるのかを考えることが大切。今がその良い時ではないか」と語る。

 (野村有希)

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/ebfaeec6f03127f6be280efdfb32362670ad37a6

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