公園の奥にある雑木林に連れ込まれ…婚活アプリで出会った38歳の獣医が”獣のような蛮行”に及ぶまで

警戒すべきなのはヤリモクだけではない

駅に戻るまでは冷静だったが、気がついてみると心臓が爆速で打っている。全身が緊張で硬直していたことに気がつく。ユウタさんはマッチングするたびに会って即やってさよならの、鬼畜なヤリモクだったのか。それなら他にも被害者がいるはずだ。

早速調べてみたが運営から強制退会させられた痕跡もない。被害届が出ていないということは、みんな獣医の肩書につられて会ってショッキングな結末だったけど沈黙しているということなのか?

私自身もユウタさんが獣医だから会ったわけだし、心のどこかで悪い人だと思いたくないという抵抗もある。が、現実にはアプリの運営に訴えれば強制退会になるレベルの反則だ(既婚者、性的強制や性暴力、詐欺、誹謗ひぼう中傷や罵倒、いずれも通報すれば強制退会になる)。

マッチング・アプリのプロフィールや自己紹介は、ぱっと見のカテゴライズには便利だが、実は「見せたい自分」として真逆にミスリーディングするケースもあると痛感した。

知っておくべき警戒ポイント初心者に寄ってくる危険な害虫はヤリモクだけではない。ここで注意事項として付記しておく。入会したてでまだシステムがよくわからない時、多くの人が遭遇するのが、投資目的の勧誘や、ロマンス詐欺を仕掛けてくる外国人美女・イケメン写真の詐欺師だ。

男性なら高収入・高学歴、女性は中国系美女に要注意

投資勧誘は大抵日本語が変で、「あなたのことをもっと知りたいです。自分は5年前から日本に移った。日本語はまだ下手です。でも気にしないで」などとフォローが入っていることが多い。そして男性なら職種は経営者や一流企業、年収は「1500万から3000万」。学歴はハーバードとかベルリン自由大学とか取りあえずエリートを騙っとけ、という嘘くささが渦巻いている。

女性は中国系の美女が多い。ロマンス詐欺の場合は、最初はラブラブな恋愛モードだが、途中から「結婚するために日本に行きたいが飛行機代に困っているので200万円振り込んで」というような金の要求にシフトチェンジする。さらに最近は美人局とグルになったぼったくりバーへの誘導や宗教への勧誘など、リスクも増加しているので、くれぐれも騙されないようにしてほしい。

入会してからのいろんな人との突風のような出会いと別れに疲労感を覚えていた頃、「菩薩」というニックネームと紹介文に惹かれて「いいね!」をした。プロフィールにはこんな疲れた心をくすぐる言葉が書き連ねられていた。

「癒し上手です。見た目も中身も菩薩です。迷いや悩みを全部私の心に置いていってください」「あなたの話をカウンセラーのように聞いて癒してあげましょう」「穏やかで決して怒らず、みんなにご利益があるとお賽銭を投げられます」「あなたをすっぽり包み込む包容力、ヒーリング力には自信があります」

菩薩さんのややぽっちゃりな体型も丸顔で温厚そうなルックスも、癒されたい気分がピークだった私には理想的に思えた。

※写真はイメージです

元妻への恨みつらみトークが会話のほとんど

「俺が世界の中心」な人々に疲れていたので、菩薩さんの懐に飛び込んで話を聞いてみたくなった。

こんな人ならきっと破局を何もかも別れた元妻のせいにしたり、家事も子育ても向いてないから丸投げしたいなんて言わない……はずだ。ところがいざマッチングしてLINEでビデオトークしてみると。「別れた妻の悪口は言いたくはないが」と言いながら出るわ出るわ……。菩薩さんが妻と別れた理由は10年前、年に何回も長期出張が続き、会話がほとんどなくなって関係が冷えてしまったことだという。

「妻は結婚当初、専業主婦になりたいと仕事を辞めたのに、子供が中学になると今度は家事だけの人生は嫌だと言い出して」

そのうち家庭内別居状態となり、早期退職と同時に離婚届を突きつけられたというシリアスな熟年離婚だ。しかも離婚後半年も経たずに妻は年下と再婚。今では娘とも年一度しか会わせてもらえない。菩薩さんは「家裁の調停で財産の半分は元妻の手に渡り、持ち家も持っていかれたので、狭いマンションに引っ越さなければならなかった。新しい会社に再就職するまで、本当に大変だった」と恨めしそう。

しかも元妻が離婚前から不倫をしていて、早期退職金の分与を計画していたと恨みつらみが止まらない。結局、2時間のトークの3分の2がその話でぐったり疲れてしまった。癒されるどころじゃない。これでは菩薩サマどころか恨みがたまった怨霊だ。

※写真はイメージです

プロフィールにあったら注意すべき「8つの表現」

なのになぜ、菩薩なんていう誤解を与えるニックネームにしたのか?

「再就職した会社で人材育成トレーニングを担当していて、そこで相手の話をすべて受け止めるのがどんなに大切かという訓練をしているんですよ。このメソッドを教えている時は、本当に菩薩様になれるんですよね」

あまりのギャップにのけぞりそうになった。それはあくまで職能であって、本当の資質ではない。つまり中身は離婚前の彼と少しも変わっていないのだ。企業のトレーナーとしてどんなに人徳があっても、家ではどろどろの怨念から抜けられない怨霊なんて絶対、ごめん被りたい。マッチングアプリのプロフィールは、好印象を与えるために弱点を都合よく粉飾されがちだ。

例えばこんなプロフィールは、裏のマイナスポイントを隠しているかもしれないので要注意。

「周りに裏表がないと言われる」→KYで気を使えない
「決断力がある」→俺サマで協調性がない。相手の意見が聞けない
「経営者」→月商10万に充たないネット通販ショップなどの経営
「年より10歳は若いと言われる」→リップサービスを真に受けている
「すぐに仲良くなる」→付き合っていなくてもすぐやろうと誘う
「家事はできれば一緒にしたい」→と言ってもあくまで口だけ
「デート代は自分が多めに払う」→最初だけは
「実家暮らし」→生まれてから実家を出たことがない。母親が上げ膳据え膳

ざっとこんな感じだ。嘘とまでは言えないが、現実とはかなりの落差がある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です